酒田五法
酒田五法は、チャートにおけるローソク足分析の原点であり、江戸時代の伝説的な相場師である本間宗久が、米の先物取引を舞台に編み出したとされるテクニカル分析手法です。 相場の動きには、時代にかかわらず変わらないものがあり、酒田五法には、現在も語り続けられる様々なエッセンスが詰まっています。
1.酒田五法とは?
考案者の本田宗久について
酒田五法を編み出した、本田宗久は江戸時代の中期、徳川吉宗の治世である1724年、山形県酒田市(出羽庄内)で生まれました。 当主である本間久四郎光本の三男として不自由なく育ち、16歳になると江戸で見聞を広めました。 そこで米の先物取引に出会った宗久は、父の引退で財産分与された資金で米相場に手を出し、紆余曲折を経ながらも酒田五法を用いて巨財を成したと言われています。 よって、酒田五法という名前は本田宗久の出生地と、最初に成功し相場師として名を上げた、酒田の米市場からのネーミングだと考えられます。
酒田五法を編み出した本田宗久は、「相場の予測も大事だが、相場を動かす人の心理こそが大事」と悟り、相場の心得となる「宗久三位伝」を残しました。
宗久三位伝では、「仁」「勇」「智」の3要素が相場で勝つために不可欠であると説いており、現代でも十分通じる心得ですね。
酒田五法(5つの基本極意)
酒田五法には、「五法」と言われるように、以下5つの基本となる型があります。
三山(さんざん)
三川(さんせん)
三空(さんくう)
三兵(さんぺい)
三法(さんぽう)
それぞれに買いシグナルや売りシグナルとなる多様なサブパターンがあり、細かく分けると30種類近くあります。これらのパターンを通して、相場の買いか売りか、あるいは今は待ちなのかの判断できるのです。
2.三山(さんざん)
三山と逆三山
三山(さんざん)
三山(さんざん)は、トリプル・トップとも呼ばれ、上昇トレンド後に、ある一定の水準で天井が存在し、天井を頂点に3つの山が形成されるというのが特徴です。 3つの山の頂点を結んだ天井(レジスタンスライン)を超えるだけの買いの強さがなく、売りに押されている状態なので、4回目の成功はないだろうという心理が働き、下落トレンドへの転換を示唆します。
逆三山(ぎゃくさんざん)
逆三山(ぎゃくさんざん)は、トリプル・ボトムとも呼ばれ、三山の逆となり、下落トレンドにあった相場が、下値付近まで3回下落しては跳ね返され、下落しきれずに3つの谷ができたような形が目印で、大底圏を表し、上昇トレンドへの転換を示唆します。
三尊と逆三尊
三山のバリエーションの代表格として、三尊(さんぞん)があります。並んだ山の中で中央が一番高いパターンとなります。日本では釈迦の左右に菩薩が配置された三尊像に似ていることから三尊と呼んでいます。また、両脇の山が肩、真ん中の山が頭というように見えることから、「ヘッドアンドショルダーズ・トップ」とも呼ばれます。 上昇トレンドの終わりに出現し、三尊が完成した時点で、下落トレンドに転換すると予測します。
逆三尊(ぎゃくさんぞん)
逆三尊(ぎゃくさんざん)は、三尊の逆で、並んだ谷の中で中央が一番低いパターンとなります。「ヘッドアンドショルダーズ・ボトム」とも呼ばれます。 下落トレンドの終わりに出現し、逆三尊が完成した時点で、上昇トレンドに転換すると予測します。
赤三山と黒三山
赤三山(あかさんざん)
三川の解釈の一つに、赤三山(あかさんざん)があります。相場の天井付近に出現した3本の連続する陽線において、中央にある2本目の陽線が他の2本よりも上離れしている形状をいいます。 ある程度の時間を費やした上昇相場の天井付近に「赤三山」が現れた場合は、相場が上昇から下落に転じた可能性が高いことを示唆します。
黒三山(くろさんざん)
逆の黒三山(くろさんざん)は、相場の底付圏に出現した3本の連続する陰線において、中央にある2本目の陰線が他の2本よりも下離れしている形状をいいます。 ある程度の時間を費やした下落相場の底値付近に「黒三山」が現れた場合は、相場が下落から上昇に転じた可能性が高いことを示唆します。
三川には他に、「三段上げ(さんだんあげ)」というのがあります。上昇と下落を3回繰り返した形です。ある程度の時間を費やした上昇相場の天井付近に「三段上げ」が現れた場合、最後に大きな値上がりをして天井を打ったのではないかと考え、相場が上昇から下落に転じた可能性が高いことを示唆します。
3.三川(さんせん)
三川(さんせん)には2つの説があり、三山が逆になった形(逆三山や逆三尊)だと言うという説もあれば、3本のローソク足で作られた形だ言うという説もあります。 ここでいう三川は後者の3本のローソク足から相場の転換点を判断する形で説明します。
典型的なパターンとして、「三川宵の明星」と「三川明けの明星」が挙げられます。
三川宵の明星
三川宵の明星(さんせんよいのみょうじょう)は、まず1本目が大陽線で大きな上げを見せ、次に窓(まど)を開けて小陰線(コマや十字線)が登場。そして3本目、再び窓を開けた状態で逆方向に大陰線が伸びて相場が反転すると、宵の明星が成立します。 宵の明星は天井圏で出現するサインです。それまで上昇基調だった相場が反転し、これから下降していくことを示します。
三川明けの明星
三川明けの明星(さんせんよいのみょうじょう)は、まず1本目が大陰線で大きな下げを見せ、次に窓(まど)を開けて小陽線(コマや十字線)が登場。そして3本目、再び窓を開けた状態で逆方向に大陽線が伸びて相場が反転すると、明けの明星が成立します。 明けの明星は底値圏で出現するサインです。それまで下落基調だった相場が反転し、これから上昇していくことを示します。
●上記の形状で、2本目のローソク足が十字線(寄り引け同時線の上下にヒゲが付いた足型)の場合は、「三川宵の十字星」、「三川明けの十字星」と呼ばれる。
●窓(まど)とは、ローソク足を描いた際、相場の一気の上げ、または下げにより、前日終値と翌日始値が重ならないでできた空間のことを言います。その後、その空間を埋めていくような値動きを「窓を埋める」という。
4.三空(さんくう)
隣り合うローソク足の終値と始値に段差ができることを「窓が空く」と言いますが、窓は「空(くう)」とも呼ばれます。 三空(さんくう)は3つ空くと書くように、窓が3つ、同じ方向に連続して出現パターンになります。 想定してない出来事などで、相場がパニック的に動いたことを示唆しており、それが3回続けば、パニックは行き過ぎであり、逆張りのチャンスであるという心理状態になります。
三空踏み上げ(さんくうふみあげ)
三空踏み上げ(さんくうふみあげ)は、上昇局面において天井圏で4本連続の陽線が生じ、その間すべてに窓が開く場合(窓が3回続けて出現)で、相場が高値を警戒しているシグナルだと考えられ、下落への転換だと判断します。
三空踏み上げが出現するのは、買いが殺到している状態ですが、 酒田五法では「三空踏み上げには売り向かえ」と檄を飛ばしているため、リスクを取ってハイリターンを狙う手法になる。
三空叩き込み(さんくうたたきこみ)
三空叩き込み(さんくうたたきこみ)は、下落局面において底値圏で4本連続の陰線が生じ、その間すべてに窓が開く場合(窓が3回続けて出現)で、相場が底値を警戒しているシグナルだと考えられ、上昇への転換だと判断します。
5.三兵(さんぺい)
長い陽線や陰線が続けて3本並んだ状態を三兵(さんぺい)と言います。形としては、ローソク足が階段のように並んでいる状態です。 方向性を持っているという意味では三空と同じ性格を持っていますが、三兵ではローソク足の間に窓が出来るという条件はありません。要するに、何かパニック的は買いや売りが発生しているわけではなく、トレンドの発生を意味します。
酒田五法の多くがトレンド転換の発見に役立つのに対し、三兵は今のトレンドがこのまま継続するというサインになります。
赤三兵(あかさんぺい)
下落時の安値圏で、陽線が3本連続したものを赤三兵(あかさんぺい)と言います。名前は、日本においては、陽線のローソク足を赤で記していたことに由来します。 下値をそれぞれ切り上げ、上値をそれぞれ切り上げて上昇している状態にあり、売り方は、「そろそろ買い戻さないといけない」となるでしょうし、一方の慎重な投資家は、「そろそろ買ってみようか」という心理状態が予想されるので、上昇の予兆つまり、買いシグナルということになるわけです。
黒三兵(くろさんぺい)
上昇時の天井圏で、陰線が3本連続したものを黒三兵(くろさんぺい)と言います。名前は、日本においては、陰線のローソク足を黒で記していたことに由来します。黒い色を烏に例え、三羽烏(さんばがらす)とも言われます。 高値をそれぞれ切り下げ、下値をそれぞれ切り下げて下落している状態にあるため、「そろそろ売ってみようか」という心理状態が予想されるので、下落の予兆つまり、売りシグナルということになるわけです。
赤三兵でも、長めの上ヒゲが付いていたら要注意です。特に2本目や3本目の陽線に上ヒゲがある場合、赤三兵の意味が変わってしまい、「赤三兵先詰まり(あかさんぺいのさきづまり)」と言います。先詰まりと言うように、そこからは下落していくサインとなります。 長い上ヒゲが付くということは、一旦は上がったものの、まだまだ下げたい売り勢力がしぶとく強いことを示します。
逆のパターンは、「黒三兵先詰まり(黒さんぺいのさきづまり)」と言います。
6.三法(さんぽう)
相場の方向性の起点を掴む三法(さんぽう)では、合計5本のローソク足で判断材します。まず前提となるのが、相場の動きが止まってレンジ相場であり、「売り、買い、休む」で構成されています。レンジ相場では取引を休み、相場がレンジから離れて動き出したら、動いた方向に仕掛ける、というブレイクアウトの順張り手法になります。
上げ三法(あげさんぽう)
上昇局面から調整局面に入った後、再び上昇局面に入っていく流れを上げ三法(あげさんぽう)と呼びます。大陽線にはらまれる形で基本的には陰線が3本(陽線を含む場合もある)出て、翌日に高寄りして大陽線が出た形状をいいます。
上げ三法は、上昇トレンドの一時的な休みを示すものになります。また、調整局面で再上昇のエネルギーを蓄えた結果、再度活気づいて大陽線が出たと考え、保ち合い相場を上抜けするタイミングを買いシグナルとします。
調整局面、これはいわゆる「保ち合い相場」で、上がろうか、下がろうか、相場が気迷いしている状況を示しています。投資家心理としては、買えばいいのか、売ればいいのか、いったん様子見している場面です。
下げ三法(さげさんぽう)
下落局面がいったん止まり、その後調整局面で価格が戻るものの、再び下落局面に入っていく流れを下げ三法(さげさんぽう)と呼びます。大陰線にはらまれる形で基本的には陽線が3本(陰線を含む場合もある)出て、翌日に安く寄って大陰線が出た形状をいいます。
下げ三法は、下落トレンドの一時的な休みを示すものになります。また、調整局面で再下落のエネルギーを蓄えた結果、再度活気づいて大陰線が出たと考え、保ち合い相場を下抜けするタイミングを売りシグナルとします。